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薄緑の「萩駅」に濃緑の「瑞風」が交差するひと時。観光列車が必ず停車する『萩駅』の魅力

登録有形文化財でメルヘンチックな洋館駅舎「萩駅」

萩駅はとてもメルヘンチックでかわいらしい駅舎です。女性ならとても気に入るであろう外観をしています。

実際萩駅では女性の観光客の方が良く写真を撮っているシーンに出会います。

ではだれが設計したのかというと不思議なことに不明です。

建物自体は大正時代末期のものです。

そこから何回か改築されましたが、老朽化が激しく無人駅となっていたものを萩市がもらい受けて展示場として生まれ変わらせました。

現在萩駅は山陰本線の駅となっていますが、当初は美禰線が長門三隅に延線されたときの終着駅でした。

現在は新たに作られた東萩駅が萩の主要駅となっており、市中央部と近いために特急などは東萩駅に止まります。

そのため萩駅は途中駅となり、一日の乗客数は70人程度の静かな無人駅となっています。

萩駅の特徴はいくつかありますが、まずなんといっても屋根についている飛び出し窓、通称”ドーマー”と呼ばれる小窓です。

真ん中に大きいのが一つ、それを挟んで左右に小さいのが二つあります。

元々は採光や通気性を考えて設置されることが多いのですが、積雪や雨などが多い日本では珍しいですよね。

鉄道開設初期から大正期にかけてこのような洋館建築が結構建てられたそうですが、今でも残っているのは数少ないですね。

思い浮かぶのは堺市にある南海本線の浜寺公園駅でしょうか。こちらは屋根が赤色でドーマーは三角形になっています。

しかし浜寺公園駅は数年前に現役の駅としての役割を終えて、今では保存建築として移設されています。

東京の原宿駅も洋館駅ですが、小窓はついてないようです。

電話ボックス中には自働電話があります

そして萩駅を萩駅たらしめているのが、白壁の柱と梁がミント色に彩色されていることです。

普通は柱や梁は壁の中に隠してしまうのですが、日本の木造建築のように露出しています。

そしてそれを薄緑色で彩色していることで、メルヘンチックな雰囲気が良く出ているのです。

鉄道開設時当初の鉄道は市街地の端を走ってひかれていることが多いです。

これは昔は電車じゃなく汽車だったために、黒煙の被害を嫌ったためですね。

このため萩駅もはずれにありますが、近くには萩毛利藩の菩提寺である大照院も歩いていける距離にありますしバスも走っています。

萩をお越しの際は萩駅を訪れてみてください。

ホームに収まり切らない観光列車「瑞風」の威容

さて、こんな普段は歴史の建造物のような建物が現役の顔を取り戻すのが観光列車が停車する週末の一時です。

普段は2両編成のワンマン列車しか止まらないのですが、この日は10両編成の最新観光列車「瑞風(みずかぜ)」が止まります。

編成は客車が6両、展望車が両先端の2両、ラウンジ車が1両、食堂車が1両となっています。

客車はスイーツ、ロイヤルツイン、ロイヤルシングルの3クラスとなっており、定員は34名です。

内装はもちろん見れませんが、アールデコ調を基調とした優雅なものです。

わずか34名のためにこれだけの車両を用意するというのがどれだけぜいたくなことかわかります。

まさにJR西日本がプライドをかけて送り出してきた日本の観光列車だと思います。

瑞風は走るホテルのようなものなので、スピードを出さないで良い分車体は大きいです。

このため先頭車から最終車までホームを簡単にはみ出しています。

でも問題ありません。

というのも乗降客はわずかに34名、通勤列車と違ってすべての車両から乗り降りする必要はなく、真ん中の乗り降り専用車両を使えばいいからです。

その際、通常時は閉じられている専用の通行口がこの時だけは開かれて、基本的には瑞風のお客さんのみがここを通ることができるのです。

元々萩駅は一等車のお客さんの部屋とそれ以外の部屋に分かれていました。

今でも空港にはラグジュアリー客のための専用ラウンジがありますが、あれと同じようなものです。

萩駅のカメラ撮影の良いところは上の画像にあるホームをつなぐ架橋から撮影ができることにありますが、車両の高さが一般車とは明らかに違います。

ところで萩では瑞風のお客さんは東萩駅で降りてバスに乗り換えた後、市内を観光した足で再び萩駅に乗りこむというルートになっています。

瑞風は中国地方の各観光拠点が11カ所(山陽5カ所、山陰6カ所)ありますが、一カ所で2駅を利用するというのは萩と宍道駅・松江駅の2カ所だけです。

そのバスが瑞風バスです。カッコいいですね。これだけはしらせてもいいぐらいです。

瑞風の停車駅は山陽本線が岡山、倉敷、尾道、宮島口、岩国。

そして山陰本線が城崎温泉、東浜、鳥取、宍道・松江、出雲、萩・東萩となっています。

コースは周遊、山陰、山陽コースがあり、山陰山陽それぞれので上りと下りがあるので全部で5つのコースがあります。

客層はやはり富裕なシルバー層と、若い方だと新婚旅行で参加されることが多いのだそうです。

お値段も3クラスありますので、海外旅行と比較しても十分に競争力があり、新婚旅行という選択肢は検討に値するものなのでしょう。

萩駅での停車時間は約30分ほどなので、瑞風の見物や撮影の時間は十分にあります。

 

新観光列車「○○のはなし」も同日ほぼ同時刻に来駅

JR西日本は瑞風のほかに山陰線にもうひとつ、「○○のはなし」という観光列車も走らせています。

この名前かなり特徴的ですが、その意図は、山陰線には見て聞いて感じてみたいという「はなし」があり、萩(は)、長門(な)、下関(し)をめぐるからだといいます。

運行区間は、新下関から東萩駅間のそれぞれ上り下りとなっています。

2両編成で、1号車が和風、2号車が洋風となっています。

外装は夏みかんの花とハマユウをあしらっています。

萩駅は確かに無人駅ですが、瑞風、○○のはなしが停車した際は、JRの職員のみならず萩市観光課の職員さんが出迎えの手伝いをされていましたので、その意味では無人とは言えないかもしれません。

瑞風も○○のはなしも見送り客には小旗が配られます。

○○の話は基本、土日祝日を一日一往復、乗車日の3日前までに電話予約してください。

乗車券とともに座席指定券がいりますが、指定券はそこまで高くないです。

なのでせっかくこの区間を鉄道で旅したい方は乗らない手はないと思います。

萩駅の駅舎見学のみならず、観光列車が集中的に止まる日程や時間帯を狙ってみるのも旅の目的になるかもしれません。

普段は静かな無人駅も変容する未来

最初に書いたように、萩駅は一日の乗降客数が100人に満たない無人駅です。

山陰本線と美祢線の連絡も悪く、長門湯本の観光客の萩への移動もスムーズにはいきません。

例えば萩から新幹線駅の新山口駅に行こうとすれば、萩駅から長門市駅で美祢線に乗り換えて厚狭駅、そこからまた乗り換えて山陽本線で新山口駅となります。

それぞれの連絡に1時間以上かかることもありとても不便です。

萩から新山口へは市中央部にあるバスセンターから専用バスが1時間でつきますので、ほとんどの人が列車ではなくバスを使います。

そしてそのバスを運行するのがJR西日本だということが、山口の交通網の現実を考えさせるものです。

山口県の面積は都道府県の中で平均的ですが、各都市が海岸線周辺に分散しているために、都市間の移動時間が問題となってきました。

そこで山口県は「県土一時間構想」をたてました。

この構想は県庁を中心に、各市役所や空港、港湾などを1時間台(2時間未満)で結ぶ道路交通網を整備するというものです。

この構想通りに事業は進み、結果として山口のモビリティは鉄道から自動車へと大きく変化していきました。

スカスカになったダイヤを埋めるように、観光列車が走り出しています。

JR西日本が瑞風、○○のはなしと観光列車を矢継ぎ早に就行させるのもその流れに沿っています。

主要幹線鉄道は新幹線などの高速列車、普通列車は朝夕の学生やお年寄りのための通学列車、そのはざまを週末を中心に観光列車が走るというすみわけが進んでいくのでしょう。

萩駅は姿かたちは変わらずにその役割を変えていきながら時代に合わせて現役の駅舎として存在しているのです。

萩駅は駅舎にも魅力がありますが、ホームをつなぐ架橋があり、これが絶好の撮影拠点になっています。

こちらで紹介した車両に興味を持たれた方は、ぜひ萩駅を訪れてほしいと思います。

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