体験する 学ぶ

維新の原動力となった藩校「明倫館・明倫学舎」で『浴衣着付け教室』

日本三大学府のひとつ萩藩の藩校「明倫館」

旧明倫小学校をリニューアルした明倫学舎は萩市の中央部に位置し、道を挟んで市役所に対面するとても大きな建物です。

もともとは萩藩の教育や人材育成の中枢を担った「藩校明倫館」があった場所ですが、昭和10年に跡地に小学校として建築された木造2階建ての建物が旧明倫小学校です。

日本最大級の4棟連なる木造校舎として平成8年に国登録有形文化財に登録されています。

その大きさはたとえばヒノキの板で張り替えられた廊下の全長が約90mもあり、子供たちによるぞうきん掛けレースが行われるほどです。

これに対して藩校明倫館は享保3年(1718)に5代藩主毛利吉元が家臣の子弟教育のために萩城三の丸(堀内)に建てた藩校です。

それから約130年後、嘉永2年(1849)に城下の中心地(現在地)へと移転されました。

写真:「新明倫館全図」(部分)『八江萩名所図画』(萩博物館蔵)。

明倫館の建物として残っている建物は南門、観徳門、聖賢堂、水連池と有備館です。

これらの遺構群についてはすぐあとで紹介します。

萩藩の明倫館は、水戸藩の弘道館、岡山藩の閑谷黌と並び日本三大学府の一つと称され、吉田松陰や高杉晋作などもこの学校で教鞭や指導を受けて、維新の原動力となったのです。

現在の明倫学舎は旧明倫小学校をリニューアルして、明倫館から旧萩明倫小学校に連なる歴史を紹介する本館(1号館)と幕末ミュージアムや世界遺産ビジターセンターが入る2号館を併存させた複合的観光施設です。

館内には萩の観光案内所があり、予定が立っていない観光客の方でもここに来れば一通りの説明を受けられます。

1号館は無料の施設で、明倫館展示室や復元教室、天井裏見学室、ジオパークビジターセンターなどスタッフの案内とともに学ぶことができます。

本当にいろいろな側面から萩を紹介してくれていますので、ここだけでもすぐに時間がたってしまうほどです。

世界遺産ビジターセンターと幕末ミュージアムがある2号館へは正面にある通路でつながっています。

幕末ミュージアムは日本でも有数の収集家である小川忠文氏から萩に寄贈された、江戸時代の科学技術史、歴史に関する6000点の資料のうち600点を展示しています。

世界遺産ビジターセンターは世界遺産となった「明治日本の産業革命遺産」のなかでも日本近代化の原点ともいわれる萩の5資産の位置づけや、吉田松陰が我が国の工学教育に果たした役割などを映像やパネル等を使って分かりやすく展示しています。

世界遺産ビジターセンターと幕末ミュージアムは有料で、大人300円、高校生200円、小中学生100円で入れます。

ここでチケット買うと、そのチケットを萩博物館で提示すれば割引されるのでお得になります。

幕末ミュージアムでは伊能忠敬が使用した測量器具なども用意されています。

特に本邦唯一の伊能忠敬が使用したものを25年後に複製した天体観測機器である象限儀、子午線儀を見ることができます。

このほかミュージアムでは江戸時代の医学や技術、幕末の軍装や鉄砲や大砲などの重火器なども紹介されています。

世界遺産ビジターセンターでは萩の5資産、「萩反射炉」「恵美須ケ鼻造船所」「大板山たたら製鉄遺跡」「萩城下町」「松下村塾」の5つ、を中心に紹介しています。

ミュージアムやセンターを周回して最後に帰ってくると維新の偉人たちのくじ引きコーナーがあります。

自分に近い偉人たちを選んでくじをひいてみるというひと手間かかった趣向のくじなので、最後にトライしてほしいですね。

お土産屋さんも併設されていますので、萩の名産特産を見ていってほしいと思います。

萩には酒造がいくつかあり、日本酒の販売も行われています。

ここでの明倫館の紹介の内容の多くが館内で販売されているNPO法人萩明倫学舎編集の「スタッフが薦める 萩・明倫学舎の見どころ」によっていることを明記しておきます。

価格はわずかに400円で明倫学舎の紹介がコンパクトにまとめられているのでお勧めです。

現在まで残る旧藩校の遺構群

旧藩校「明倫館」で今に至るまで残っている建物は南門、観徳門、聖賢堂、水連池と有備館です。

それぞれ簡単に紹介します。まずは南門(なんもん)です。

南門とありますが、明倫館の正門でもあります。

明倫館の南側に設けられた正門であったために南門と名前がついています。

かなり大きな門で、切妻造本瓦でできています。

この門は普段は閉じており、藩主が春に聖廟を礼拝するときや、秋に孔子に関する祭りに拝見するときぐらいしか開かれませんでした。

新明倫小学校前の広大な駐車場から明倫館に向かう途中にありますので、すぐにわかると思います。

次は聖賢堂です。

聖賢堂は水練池の側にあります。

聖賢堂は聖廟で行われる釈菜(せきさい)や孔子の祭りの道具などを収めている施設です。

そのため藩校明倫館当時は孔子廟の前、観徳門の左右にあった東塾・西塾の遺構のひとつになります。

聖賢堂の側に水練池があります。

水練池は日本で現存する唯一の藩校のプールです。

藩主毛利敬親(たかちか)は明倫碑にこう記しています。

聖廟の後ろに池を作り、水中騎馬をせよ

実際に甲冑を身に着けて、水練に励んだといいます。

鴨泳や抜手泳など、日本古来の水泳法もこの池で練習しました。

またこの水練池は47棟もあった明倫館の木造建築の防火用水としても利用されたのです。

さて藩校だった明倫館で現存する建築物の中で最大のものが剣術道場として利用された有備館(ゆうびかん)です。

有備館の名称がどこから来たのかといいますと、大正四年に江戸の桜田にあった萩藩邸の文武講習所の名前である「有備館」からです。

入ってみますと、長い黒光りする床板が長州藩士の質実剛健の気風を感じさせます。

この床下には2個の甕(かめ)が設置されていたのですが、これは剣術の鍛錬の際に音をよく反響させるためだそうです。

まさにスピーカーと同じですね。

文久2年(1862年)のことですが、坂本龍馬が武市瑞山(たけいちずいざん)の書簡を持参しに萩藩に入った際、この有備館で剣術修行を口実に密談したといいます。

道場より一段高い畳敷きの部屋がありますが、これが敬親公自らが藩校生の様子をつかむための上覧場です。

有備館は中に入れる日とそうでない日があるので、公開日に行かれた方は是非中に入って楽しんでほしいと思います。

その有備館の側にあるのが観徳門(かんとくもん)と石水盤です。

観徳門は交差点にある明倫館の入り口付近にありますので、一見見逃してしまいがちですが、昔の面影を残した遺構の一つです。

藩校当時は中心部にあった孔子廟と南門との中間にあった門になります。

その門の裏手、有備館と観徳門の間にあるのが石水盤です。

石水盤は、藩校当時南門と観徳門の間にあった手水鉢です。

石水盤と観徳門は有備館を見学する際に側にあるので忘れず一緒に見学してくださいね。

明倫館内で着物の着付け教室

着付け教室「キモノノキカタ」講師の林栄美子さん(右)

さて、明倫館の紹介はここまでにして今回はこの明倫館内の一室で浴衣の着付け教室「浴衣1dayレッスン」が7月30日(火)に開かれたので行ってきました。

参加者の方は、浴衣、腰ひも、帯を2,3本、フェイスタオルを2枚、持っていれば帯板、伊達締めを持参してもらうことになっています。

もともとは着付け未体験の夏休み中の学生さんたちを中心に募集をかけたのですが、当日は不慣れな大人の方や外国の方も参加してくれました。

教室の講師は着付け教室「キモノノキカタ」を萩市内で開いてこられた林栄美子さんです。

浴衣に限らず着物の着付けというのは昔はおばあちゃんやお母さんから習っていたものでしたが、今はそれも難しい時代になっています。

萩っ子なら着物ぐらい自分で着られるよという風になれれば萩のブランドがまた高まるのではないか、着物ぐらい自分で着られるようにするというのが文化の継承として大切ではないか、という思いで教室を開かれているそうです。

浴衣を自分で着られるようにするため、基本自分自身で着付けすることになります。

なので皆さん四苦八苦しながら完全ではないながらも自分ひとりで着られるようにがんばっていました。

それでも皆さんなかなか美しく着れているように思います。

林さんはこのような機会を定期的にもうけたいというお考えだそうですので、興味を持たれた方はまたこのような機会にチャレンジしてほしいと思います。

館内のレストランとカフェのご紹介

明倫館はかなり大きな観光施設で博物館的要素も含んでいるので、一回りするだけでも結構時間がかかりますし一休みしたくなると思います。

館内には骨休みのカフェとレストランがあります。

これらは同じ萩暦(はぎごよみ)という運営主体が経営しています。

自分はいつもはカフェのほうを利用することがありますが、今回はレストランのほうに入ってみました。

昼食に皆さんのために奮発してお店で二番人気の特選ランチセットを注文してみましたよ。

価格は1500円するのでそれなりのランチになると思いますが、それだけの内容があります。

小鉢がたくさんあって、女性なら大好きなタイプではないでしょうか。

量も女性ならちょうどおなか一杯になりそうな具合なので、お勧めしたいと思います。

一番人気はよりグレードアップされた2400円の萩御膳ですが、今回は予算の都合上見送りました笑。

この御膳は萩市内のいくつかの飲食店で召し上がることができます。

いつか挑戦してみたいですね。

最後にアイスコーヒーをいただいて後にしました。

セットだと割引されるので忘れずに注文してほしいと思います。

それでは明倫館の紹介をしてきましたがいかがでしょうか。

明倫館は遠方から来られても新山口駅からの長距離バスのスーパー萩号が停車してくれますし、萩観光の出発点として足を運んでみる価値のある観光施設だと思います。

予定が立っていない場合は親切なガイドさんが希望を聞いてアドバイスしてくれますし、明倫館の駐車場には市内の周回バスが来てくれるので便利ですよ。

関連記事