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近松門左衛門の郷(さと)にある文化複合施設「ルネッサながと」
ルネッサながとは近松門左衛門の出生地ともいわれたこともある長門の地に2000年に造られた劇場だけではなくテニスコートや体育館などが併設された文化複合施設です。
劇場の席数は812人を収容することができてなかなかの広さです。
このルネッサながとが特殊なのは近松を意識して廻り舞台、花道、文楽廻し、奈落、すっぽん、桟敷席など、日本の伝統的な芝居小屋の装いがなされていることです。
国立劇場並みともいわれ、そのため文楽や浄瑠璃、歌舞伎などの演舞が結構な頻度で開かれています。
「すっぽん」というのは舞台用語で舞台下から役者が昇降装置を使って舞台上にでてくるための”切り穴”のことを指します。
同じような意味で「せり」というのもありますが、こちらは本舞台上に設置してあるもの、すっぽんは花道にあるものを指します。
山口には岩国にシンフォニア、下関の川棚にコルトーホールという施設がありますが、これらはクラシックに特化した造りになっています。
お互いに特化したものがあればすみわけができていいですよね。
照明なども提灯を模したものとなっていて、なかなか風情のある装いです。
正面からだと体育館が後ろにあるのでわかりにくいのですが、裏の駐車場からみると体育館と劇場で構成されていることがわかります。

左が体育館、右が劇場
駐車場もだいぶ広くて開放的です。
なかなか巨大な建築物であることがわかると思います。
その駐車場わきにテニスコートがあります。
一面30分200円、60分500円で毎週月曜日に利用できます。
イタリアンレストランもあり、お食事も楽しめます。
また前方には市立図書館もあります。
市立図書館は駐車場がよく埋まっていて、市民によく利用されてるなと感じました。
上映会でしか見られないドキュメンタリー映画「人生フルーツ」
さて、今回ルネッサながとを訪れたのは、「人生フルーツ」という東海テレビが制作したドキュメンタリー映画を見に行くためです。
この映画はもともと上映を期待して企画されたものではなく、評判が良かったので映画化したという経緯があります。
そのような特殊な経緯もあり、DVD化もされていないためもちろんレンタルでも見ることはできません。
なのでこのような地方における上映機会はとても貴重なのです。
そのためなのか、結構な人数のお客さんが入っていました。
8割がた女性というところに、女性の良いコンテンツを楽しみたいという貪欲さを感じますね。
ミニシアターでの作品は大手やハリウッド映画とはちがって最初の番宣がないのでいきなり本編が始まるのが新鮮です。
また東海テレビ提供というのも新鮮です。
さてそんな新鮮づくめの映画ですが、この映画の主人公は津端修一さん、英子さん夫婦です。
修一さんは90歳、英子さんは87歳なので、二人合わせて177歳なので、映画の主人公としてはまれにみる高齢者ということになりますね。
しかし映画全編を通してずっとおもっていたのはよく食べ、よく動き、よく眠る元気と快活さでした。
たとえば修一さんの自転車の軽快な乗り方は若者のそれです。
樹木希林さんの同じ文句のナレーションが度々入りますが、これがそのまま作品のテーマになっています。
風が吹けば、枯葉が落ちる。
枯葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。
こつこつ、ゆっくり。
人生、フルーツ。
修一さんは東大卒で戦時中は海軍技術士官で、戦後は住宅公団で数々のニュータウンを設計するというエリートです。
英子さんは老舗の酒造の娘さんで、二人ともなんだか育ちの良さが感じられます。
連れ添って65年、二人のスローライフを淡々と描くドキュメンタリーではあるのですが、お二人の生活には効率一辺倒の現代社会へのプロテストが垣間見れます。
津端さんは無機質で没個性で規格一辺倒な団地づくりに抵抗しますがあえなく挫折します。
津端さんは一帯が更地になったニュータウンの一角に自分の土地を購入し住宅を建てます。
その住居の設計は修一さんが務めた設計事務所の主人アントニン・レーモンドが設計したものと同じものでした。
その住宅の庭に雑木林を育てて、英子さんと一緒に自給自足の半農生活を送るのです。
この映画のもう一つのテーマが著名建築家のいくつかの言葉です。
「家は、暮らしの宝石箱でなくてはいけない」―― ル・コルビュジエ
「すべての答えは、偉大なる自然のなかにある」―― アントニ・ガウディ
「ながく生きるほど、人生はより美しくなる」―― フランク・ロイド・ライト
この映画を見て思い出すのは、宮崎駿の「風立ちぬ」でした。
あの映画の主人公は同じく東京帝大卒で飛行機設計者、ヒロインは資産家の令嬢さんという設定でした。
どちらも時間にルーズでどこか芸術家気質でたぐいまれな才能を持ちながらも結局は挫折します。
もしお近くのミニシアターでこの映画が上映されるならぜひ見てほしい作品だと思います。
裏山のフィールドで思わぬハイキング体験
ルネッサの周りをぐるり歩いていると、テニスコートの裏山につながっている連絡通路なるものを発見しました。
なんだか天狗の鼻のようですが、どうやら裏山の山頂につながっているようです。
なので施設のほうから連絡路に行ってみました。
入り口わきの階段から登れるようになっていて、山を登らなくても山頂にいけるようになっています。
山頂からは仙崎市街と港が一望できます。
裏山の裏には公園があり、そこまでは長い長いすべり台で行けます。
これは子供たちは大喜びでしょう。
実際虫取りに一生懸命な子供たちを見かけました。
麓の駐車場からハイキングがてらに登山もできますし、いい運動になります。
金子みすゞの郷に「センザキッチン」。仙崎港では新鮮なイカやフグ料理が楽しめます
センザキッチンは地元の特産品などを集めた仙崎港にできた新しい観光施設です。
道の駅ならぬ”海の駅”といった風情ですが、実際に国道からは離れており、港のすぐそばにできています。
仙崎港は昔は下関漁港と並んでくじらの水揚げ漁港として有名でした。
そのために大きなクジラの看板?モニュメント?が眼前にあります。
また仙崎は児童作家の金子みすゞの出生の地としても知られていますね。
金子みすゞは東北大震災のときにもACのCMで取り上げられて話題になりました。
「こだまでしょうか」や「みんなちがって みんないい」などは人口に膾炙しています。
長門市内のいたるところで金子みすゞの壁画をみます。
例えば仙崎駅舎の中や長門湯本の家屋の壁などにです。
金子みすゞの好きな詩をひとつ紹介しておきます。
大漁
朝焼け小焼だ、 大漁だ
大羽鰮(おおばいわし)の 大漁だ。浜は祭りの ようだけど、
海のなかでは 何万の、
鰮(いわし)のとむらい するだろう。
さて今回はこの仙崎港で新鮮な魚料理が食べられる喜楽で食事をすることにしました。

左手の角に浜屋、右手に喜楽
ここでのおすすめはやはり仙崎港で獲れた新鮮な仙崎イカ料理です。
が、今回はフグ料理をいただくことにしました。
身がぷりぷりとしてしまっていておいしかったです。
長門は今年9月に開幕するラクビーWCのカナダ代表チームのキャンプ地となっています。
ルネッサの道に面するスーパー付近に立派な体格の外国人女性選手が歩いていましたので、体育館でトレーニングを行っていたのでしょうか。
ユニフォームをみると長門に拠点を置く女子ラグビーチームの「長門ブルーエンジェルズ」のメンバーみたいですね。
長門のどこの会場や宿泊施設でチームが活動するのかは主催者側の要請により非公開となっていますが、なんとなくわかるような気がします(笑)。